株式会社 日本医療情報システム総合研究所

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事業方針

 近年、いよいよ本格的な段階を迎えつつある医療のIT化であるが、これから2020年までの医療IT化の中心的課題は、分散超小型コンピューティング技術と無線技術の結合であるユビキタスコンピューティングの医療・健康応用とその基礎概念であるMedical Intelligent Spaceであると考える。
 これまでの医療のIT化は電子カルテの代表されるように情報システムのみで閉じていた。例えば注射や処方のオーダが情報システムを介して医師から看護師へ伝えられたとしても、実施において特定の注射薬を特定の患者を同定するのは、看護師自身のヒューマンコグニションで情報システムと実施世界の間にはまだITの解離があったといえる。個物に電子タグが装着できれば、個物自身がID情報を情報システムに発信でき、実施行為に過誤があれば警告を発することができる。これは<情報システムとその周りの実施世界との間を包摂する情報空間を張った>ことになる。
 このように考えると、病院内から生活空間まで、連続的に変化する<医療情報の濃度とIT化のグレードの区分>が存在する。例えば病院内では手術室や救急センターなどでは情報濃度・時間的緊急性も高く、ICU/CCUなどの集中管理室がそれに準ずる。さらに一般病棟、外来診療へ移動するにつれて、情報濃度・時間的緊急性は順次低下して行き、病院外から地域へ移行して在宅医療、健康管理になると生活空間全体に広がり、情報濃度は希薄になるが、広域化して全国的な規模での情報空間の構築が必要になる。医療・健康情報のIT化の課題、すなわち上で述べた部分圏での課題を、医療情報圏の全体的視野から眺め、トータルに把握する概念がMedical Intelligent Space(医療情報空間)論である。  
 これまで病院情報システム、地域ネットワーク、在宅医療、遠隔医療、モバイル、ホームケアITといわれていたすべての分野は、情報の濃度を変えながらシームレスに手術室から生活圏まで広がり、全生活空間に医療情報の網を張るIT環境の実現の問題として統一化できる。本研究所はこれらユビタス医療社会実現及び災害時を想定した緊急医療に於けるユビキタス医療情報システムの構築や医療ネットワークの調査・研究活動を支援し、全ての国民が安全でゆとりのある生活を営める社会環境整備に貢献する事を目的とする。